きょうの健康 肝臓病
担当 中島淳(あつし)先生 横浜市立大学大学院教授
テーマ 化学工場、肝臓
肝臓は、横隔膜のすぐ下、胃の隣にあり、体の中で最も大きな臓器です(約1キロ)。
肝臓は、栄養素などさまざまな物質を化学的に作り替えて、加工・貯蔵・各器官に補給して、その働きを助けています。いわば、化学工場なのです。
肝臓はよく働き、がまん強いのが特徴です。少しくらいダメージを受けても、黙って働き続けるため、「沈黙の臓器」とも呼ばれています。そのため、肝臓が病気になっても気づきにくいのです。
肝臓の主な働き
① 解毒(げどく)
アルコールやたんぱく質を体内でつくる際に生成される毒性のアンモニアを解毒したり、薬の有害な部分も無害な物質に変えることが出来ます。
② 加工・貯蔵
食べ物から取り入れた栄養素は、そのまま体内に吸収することが出来ません。他の物質に変えて貯蔵することで、はじめて可能になるのですが、その役割を肝臓が担っています。
③ 胆汁(たんじゅう)を作って、分泌する。
<肝臓病の原因>
① 肝炎ウイルス(A型、B型、C型、D型、E型)がウイルス性肝炎を引き起こします。
② アルコール・肥満・一部の薬は、肝臓に脂肪がたまる脂肪肝(しぼうかん)の原因となります。最近は、食べ過ぎや運動不足によって中性脂肪がたまる脂肪肝が増えています。
③ 一部の薬によって、薬剤性肝障害を引き起こすこともあります。
(進行)
脂肪肝から
⇓
●慢性肝炎
⇓
●肝硬変
⇓
●肝臓がんへと進行する場合もあります。
ただし、ウイルス性肝炎が原因で起きた慢性肝炎は、肝硬変を経ずに肝臓がんになることもあります。
肝臓病の場合、まずは血液検査で肝臓に異常がないか確認します。
脂肪肝、ウイルス性肝炎、慢性肝炎は、ALT(GPT),AST(GOT),γ(がんま)-GTP,ウイルス検査という項目で調べます。
ALTとASTは、肝細胞の中にある酵素で、肝細胞が壊れると血液中に漏れ出てくるために、値が上昇します。特にALTは肝細胞にしかない物質なので、肝臓の状態を調べるのに重要な目安になります。
ALT,ASTが正常より高い数値だと脂肪肝・ウイルス性肝炎・慢性肝炎が疑われます。まずは、ウイルス検査を受けることが大切で、血液検査で調べられます。
アルコールが原因の場合は、γ-GTPが基準値より高くなっています。
詳しく調べる検査には、超音波検査、肝生検があります。
肝生検は、超音波で位置を確認しながら、おなかの表面から肝臓に細い針を刺して、細胞の一部をとり、顕微鏡で調べます。脂肪肝あるいは肝硬変、肝臓がんまで肝臓の状況を詳しく知ることが出来ます。
肝臓の硬さ(線維化)を調べる検査もあり、MRエラストグラフィや超音波エラストグラフィなどの新しい画像検査です。