8/17 きょうの健康 心臓病と言われたら
心臓病と言われたら患者として、どうするべきなのでしょうか?
井上信孝(のぶたか)先生
神戸労災病院 副院長
心臓病であるというだけで、不安や精神的ストレスが心臓病に悪い影響を及ぼすことがあります。
先生によると適切な治療によって心臓病は十分、コントロールはできる病気です。
心臓病と言われた場合の不安や悩み
☆この先、心臓病が命にかかわることは?
☆憂うつなことが多く、何も楽しめない・・
☆悪化を防ぐには、どうしたらよい?
☆心臓に負担をかけそうで怖い。
運動しないほうがよい?
患者の心得
この先、心臓病が命にかかわることは?
急性心筋梗塞や不安定狭心症と診断された場合、(*不安定狭心症=いつ心筋梗塞を起こしてもおかしくないタイプの狭心症)すぐにカテーテル治療やバイパス手術などが必要で、治療によって延命率も上がります。また、日常生活に戻れる確率も上がります。
カテーテル治療やバイパス手術の成功率は95%以上。ですので、むやみに怖がる必要はないと先生もおっしゃっています。
他にも命に関わる主な心臓病は、不整脈(心室頻拍ひんぱく)や慢性心不全などでいずれの病気も早めの治療でリスクを減らすことができます。
例えば、危険な不整脈(心室頻拍)は、薬、カテーテル・アブレーション、植え込み型除細動器(じょさいどうき)(体内に植え込むAED)の手術を行うことがあります。これらの処置によって、かなり高い確率で突然死を防ぐことができます。
拡張型心筋症・肥大型心筋症も薬や手術で治療されます。
慢性心不全は、薬、手術、ペースメーカーで治療されます。
患者の心得
☆憂うつなことが多く、何も楽しめない・・
<抑うつの症状>
物事に興味がなくなってきた
食欲の低下
何も楽しめない
絶望的な気持ちになる
家族からみて様子がおかしい
気分の落ち込みが2週間以上続いて日常生活に支障が出たら、主治医に相談してください。抑うつ状態が疑われます。
心臓患者の約20~40%が抑うつ状態であると報告されています。
慢性心不全の患者さんについての研究では記憶や感情をつかさどる海馬の血流が低下していることが明らかになっています。
因果関係は定かではないですが、心臓の機能の低下により脳の血流障害が起こり、抑うつの原因となっている可能性もあります。
ストレスがあると、交感神経を過剰に活性させます。それによって、血管の緊張や心臓の拍動の増加などが起こります。それが狭心症・心筋梗塞の誘因となりえます。
また、抑うつ状態だと、活動や運動の減少、受診しなくなる、薬を飲まなくなることもあり、そういった行動も心臓病悪化の一因と考えられます。
患者の心得
☆悪化を防ぐには、どうしたらよい?
何でも話せる、 信頼できるかかりつけ医を近所にもちましょう。精神的ストレスを軽減し、いざというときにすぐ診(み)てもらえます。
心臓病の悪化を防ぐには、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病や肥満を解消しましょう。禁煙も非常に重要です。
患者の心得
☆心臓に負担をかけそうで怖い。
運動しないほうがよい?
多くの場合、適度な運動が有効です。適度な運動によって全身の体力を維持することで、心臓の負担が減ります。また、胸の痛み、動悸(どうき)、息切れなどの症状が軽減します。
適度な運動というと、ウォーキング、軽いジョギングなど有酸素運動が基本。
主治医にその人にとって安全かつ効果的な運動強度を聞きましょう。自己判断では行わないでください。
場合によっては、心臓リハビリテーションがおすすめです。心臓リハビリテーションは、心臓病の専門病院で行われています。心臓病の再発予防を目的とした総合的なプログラムです。
ただし、運動してはいけない場合もあります。
新しい症状が出てきたり、症状が安定しなかったり、悪化していると感じるときです。必ず、主治医に相談してください。